ヤマモトヨシコさんをインタビュー
|ヤマモトヨシコさんにあれこれ聞いてみた
インタビュー:2013年12月27日 @ギャラリー2
2013年12月7日にQ2で行われた 神戸ビエンナーレをさらに盛り上げるために「100人のアーティスト」が集まる会 の呼びかけ人のリーダーであるヤマモトヨシコさんに神戸のことやアートのことなどを聞いてみた。
プロフィールについて
Q:ヤマモトさんは神戸に住んでるんですか?
今、西宮です。
Q:生まれは神戸ですか?
じゃないです。ここ(Gallery2)だけが唯一神戸。
Q:学校は?
京都造形芸術大学卒業です。
Q:このサイトでは芸術とかアートって難しい、わかんない、でも面白そう、って人を集めて遊ぼうと思ってます。
芸術のこと本当に私もわかってないんですよ。メンバーで芸術のことについて深く語り合わないんですよ。「オレはこう考えてるんだとか、芸術ってこうだよね」とか、話し合った事って一度もなくって、ただ一緒に生きてるだけです。
私の師匠が「芸術ってこういうもんだ」とか、話さない人だったので。(師匠が)本を書いてたのでそれを読んでたりはしてたんですけど。
Q:師匠って誰ですか?
嶋本昭三です。具体美術協会で世界で凄い評価があるんですけど、戦後の前衛芸術のグループで赤瀬川原平達より前の。ニューヨークのグッケンハイムでも去年展覧会やってます。ぶっ飛んでますよ。だから芸術のこと詳しくないメンバーばっかですよ。
Q:作品展示とか個展とかは?
初個展を去年夏にフィンランドで、1週間から10日くらいしました。初個展が海外でフィンランドで、ってかっこいいかなって。
一昨年フィンランドに行った時、レンガの古い生糸の工場を活用した図書館とか学校とか色々広大な敷地の中の、ひとつの美術館が気に入って。「ここで展覧会するにはどうしたらいいんですか?」って聞いて、「こうこうこうして審査があって、できるよ」って言われて、やってみよって。フィンランドには嶋本の友達がいっぱいて、わーいい人達だーって、日本人の人達もいるので、去年やろうかなと。
Q:反響は?
パフォーマンス的にペンキを人にかけて写真を撮るっていうのをずっとやってて、それ観て「うちでもやっていいよ」って撮らせてくれたりとか。美術館の展示の時に敷地の駐車場で養生ペラペラのを1枚敷いて、もうめっちゃ汚れましたけどね。あと家とか何箇所かでやらせてもらって。
一昨年の時点で、貴族が昔住んでた敷地に住んでる金持ちに「ここでやっていいよ」って言われてやってたんですよ。展示の時にその写真を買って家に飾ってくれてたんですね。それを見た知り合いが「これ雑誌に使いたい」って。それがフィンランドの文部省出版というところの人で、使ってくれたんですよ。そういういい人達に守られて。
Q:昨年12月7日のイベント(神戸ビエンナーレをさらに盛り上げるために「100人のアーティスト」が集まる会)の表題写真がそうだったんですね?
何か無いかなって思って。あれフィンランドで撮ったんですよ。全然関係ないじゃないですか神戸と。ポートタワーとか神戸らしい景色は入れたくないな、何これっていうのにしようと、笑ってるし。
誰も聞かないのも面白かったですよね。
興味のあること マイブーム
Q:他にどういった写真を撮ってますか?
人ですね。建物や風景写真とか撮れないですし。
テーマ性難しいですね。ただ絵でイメージでバンってこんなの撮りたいって思ったらすぐ電話してるみたいな。この人モデルでこんな状況でこんなんやりたいって思ったらすぐ撮るって感じ。撮りたいと思ったら撮るっていうのがテーマです。それが自然な状況でもなんでもそうなんですけど。
これから課題にしていきます、私はいったい何を撮るのか。まだまだ撮りたいものがいっぱいあるんで。言葉でいうのが難しいんですけどね。人と煙とか人と三角定規とか、そのへんを構成して。シャープな図形に、もやっとしてる中にバシッとしたラインがあるとか。こんな感じです。
意味は無いんです。これを伝えたいっていうのはめったになくって。たまにありますけど。だいたいの写真は構図ですね。美しいと思ったら切り取り。
Q:その前ってどんな作品作りをされてますか?
大学の時は情報デザイン学科っていう謎の学科で、デザインとかシルクスクリーンとかを。作家を育てるような学科なので、テーマを先生がポンと言ったやつをどんなカタチでもいいから表現するっていう学科なんです。技術を学ぶようなところではない、発想を学ぶような学科でしたね。
当時の芸大生って写真を撮りたがるので、私もLOMO(ロモ)とか買って、撮って、現像したらなんじゃこの下手な写真はって。わからなかったんですよ、撮り方とか全然。
卒業して師匠のとこに弟子入りして、それで先生に「写真できる?」って言われて、カメラも無いしやったことも全然ないんですけど、「できる」って言っちゃったんですよ。そこからですね。知り合いからちっちゃいコンパクトカメラみたいのを借りて、一回試しにやってみようって。山におばあさんと40代と20代のコ連れて裸の撮影会をして。それ見て、知り合いの美容学校の理事長に「ウチの学校で写真の先生やらない?」って言われ、「やるやる」って慌ててカメラ買って。
師匠からは、具体的にこうやったらいいとか一切言われてなかったんですけど、付いて写真を撮ってるとわかるんですよ。どうやったらいいのか。なんて言ったらいいのか説明できないんですけど。どんどんこうやったらいいんだ、あーやったらいいんだってわかって。カメラマンとかも全然詳しくないんですけど、師匠に付いて一緒にやってるだけでできるようになった。師匠がなんか引き上げるのが得意な人なんですよ。無意識で。私はまさしくそれです。不思議だなぁと思って。
ギャラリー運営について
Q:ギャラリー運営は?
去年(2013年)の11月くらいから。
私達はすっごいバカなことをやりたいんですね。変なことをやってその同志を集めていくような作業。
そして最近3名にプラス1名追加になって。共同経営なんですけど、私が個人事業で代表ってカタチでやってるだけで、あとはみんな一緒の立場。社交的な人が私だけなんで。
Q:どんな事業をされてますか?
カフェ・ギャラリー・レンタルスペース・イベント・共同アトリエ、あと、お弁当作ったりしてます。
フェリシモって会社の社長さんに「うちでお弁当売ったら?」って言われて、週一回お弁当屋さんをやってるんですよ。40個位。やっと慣れてきたっていうか、やり方がわかってきた。やったこと無かったんですね。でも「うん」って言っちゃうんです「私やります」って言っちゃうんですよね。
ここを引き継いでから1年位売上は伸びて行ってて、最初全部が初めてだったんで、こっから利益出すのは難しかったんですけど、私達も接客業飲食業がなんとなくわかってきて。レベルが低かったのね凄く。売り上げ上がってるけど、経費みたら、売上と経費全然変わんないじゃない!こんだけ?利益!って。衝撃。
すごいです、みなさんお仕事ちゃんとされてるのが。飲食業難しいなぁ。プロがいっぱいこの辺にいますからね。変わったことやんなきゃと思って。飲食がベースになってますね今は。
イベントは結構稼げるんですけど、ここも利用者が増えればもっときれいに回るんですけど、季節によってかなり変わります。なんでこの月ばっかり人気があるんだとかって。そんなにアーティストもいないですしね。
学生さんはあんまりないですね。神戸芸工大のコは結構使ってくれるんですけど、思うほど少ない。京都だったらもっともっと多いでしょうけど。そんな芸工大の学生が街をウロウロして活動頑張ってる?頑張ってるのかな?モトコーとかの方が多いのかもしれないですね。安くでスペース借りれるから。
グループ展で使ってみてもらったりですとか、会社の人が商品を置いて販売したりとか。色んなジャンルの人に、レンタルスペースとしてここを使ってもらったり同窓会やったりとか。一日貸しとか。セミナーやったり。映写もできます。ハッタリかましてません。スクリーンもプロジェクターも有ります!
Q:フードもやってます?
カウンターの方はキッチンで、カフェスペースに持って来て食べる感じです。フードも出しまくってます。ランチとかもかなりやってます。昨日もここで21人と9人の宴会で、ずっと一人で作りっぱなしでした。料理は元々得意で、バイトですけど飲食関係に勤めたこともあります。
独学で、やる時徹底的に調べるんですよ。本の情報と、本と言っても料理本から小説からマンガも。あとテレビの料理番組とか、昔のをまた見たりとか。人からもそうだし。料理っていう情報は全部。あのミスター味っ子とか美味しんぼとかも全部。それ大学の時からずっとやってますからね。上手になるためには。東海林さだおの丸かじりシリーズとか全部。マニアです。
Q:作品と料理どっちが凝ってますか?
今料理かもな~。料理も楽しくって。他がやってないことやろうっとかすぐ言うんですよわたし。
なのでSMのイベントここでやった時は、煮玉子を縄で縛って上に吊るして「恥玉子吊るし」っていうので、名前だけSMっぽくして吊るして売ったりして。それっぽい名前を考えて演出とか、そういうバカなことが好きなんでしょうね。
どっちも楽しくやってます。写真も料理も。全てにおいてちょっとふざけてますね。ずっと。
恥玉子吊るし食べて欲しかったなぁ~。
イベントについて
Q:他にはまってることは?
イベントですね。
いろんなパーティとかイベントとかで、音楽かけて料理があって、わ~ってやってるようなイベントってもういいかなって。ほとんどみんなやってるから。そうじゃない刺激的な新しいイベントをどんどんやりたくって。うちでしか味わえない独特の大人が楽しむイベントを。この前のクリスマスにやったのが「スナックおばけ」。アーティストとかみんな女装してとか。
あと貧乏っていうテーマで今度やろうと思ってるんですけど。ちょっと飲み物が薄かったり、いきなり電気止められたり真っ暗になっちゃってとか、ちょっと寒かったり。だからドレスコードは貧乏になりますよね。
あとは街とか博物館とか使ってアート性のあるイベントをできたらなと。ナイトミュージアムとかあるんですけど、それを博物館でやりたいなって。勝手に。まだ企画書出してないんでなんともあれですけど。
なんか大人たちが夜お酒以外で楽しめるものを考えてます。夜なので光る食べ物とかうまく演出して、作ってできたらなぁって。それがナイトミュージアムとか博物館の中にあって 光るパンとかがあったら、糸でそれを釣っといて、糸の先には糸を結う歯車みたいので一本にする。それをかき集めて川のように。でっかいその糸の塊の方をそこに食べ物も紛れ込んでわーっと。
来年どっかでそういうのをやっていけたらなぁっと思って。わくわくしてしかもオシャレで大人が楽しいって思えるような。神戸はそういうのができると思うんですけどね。神戸はしっとり楽しめそうな要素があるような気がして。
そう思いながらお弁当作って一生懸命働いてます。
神戸ビエンナーレをさらに盛り上げるために「100人のアーティスト」が集まる会をやってみて
Q:神戸ビエンナーレをさらに盛り上げるために「100人のアーティスト」が集まる会を開催してみてどうでした?トリエンナーレにした方がいいんじゃって意見もありましたが。
やっぱりなんかビエンナーレとトリエンナーレその2年とか3年て問題は、やってる事務局の人とか関わってるスタッフとかそっちが重要じゃないですか。どういう働きでどれぐらい忙しくて。そういう話聞いてるとトリエンナーレの方がいいんじゃないかって思いました。だって検証して「はい、すぐ次の準備!」とかやって、ゆっくり次何したらいいかって資料探すなりなんとかする準備期間が無いような。だったら1年足してトリエンナーレにして、ちゃんと丁寧に一個一個の問題をみていって、どうしたらいいかっていうのをやっていった方がいいんじゃないかなって思いましたね。最近は行政がやるものはトリエンナーレが多いって。そんな声聞くと本当に「神戸トリエンナーレにしちゃえばいいじゃん」って言うんですけど。「そんな簡単にいかないんですよ」って言われるんですけどね。「じゃあいいの?問題はそのままほっとけばいいの?」って。
Q:神戸ビエンナーレをさらに盛り上げるために「100人のアーティスト」が集まる会のビフォーとアフターで変わったことは?
本当に心の底から反対集会とか市民運動とかそういう敵を作るような行動にしたくないなって思いました。それが悪いとは思わないんですけど。私達はもうちょっとカタチを変えたアプローチの仕方をして、今ある神戸ビエンナーレのカタチを確実にいい方に変える方法をもっと考えなきゃいけないなぁって思いました。
ビエンナーレ事務局の人達に資料(意見のまとめ)を持って話をしに行ったんですけど、ちゃんと話を聞いてくれるんですよ。「こういうとこ問題ですよね」「こういう風にならないですかね」って言うと、わかってくれてるんですよ。
ただ問題の話をし合ってるだけよりも、しがらみのない私達が解決策をプレゼンってカタチだったらもっと良くなる方向に近づく。次は早く解決策を考えたいな。みんなの意見の分析からどういうカタチが現実的にできるかなっていうのをよく考えて次のプレゼンに活かしたいなって思いました。市長に聞いてもらいたいので市長が忙しくない時期にしたい。事務局の人は聞いてくれると思いますよ。
向かう先
Q:今後の予定。どこへ向かうんですか?
どこに進むんですかね。自分でもわかんないですね。結局芸術なんですけど。料理やってるにしろイベントやるにしろ、芸術やってるのと変わらない気持ちで、やっぱここだけでこの店だけでやりきれることじゃなくて、街に大きな広がりでやりたいですね。海外でやるにしてもどっかの場所使ってやるにしても大きな影響を。
Q:アーティストでありつつアーティストを育てる立場?
一緒に考えてがんばろうって感じですね。なのでとにかく人に観てもらわなきゃいけないので作品てのは。飲食やってるのもそうですし。一般の人が来やすくなるかたちかなって思って今やってますけど。もっともっとここで発表した人が、色んな人に観てもらえてよかったとか、次に話が繋がれたとか、そういうふうにならなきゃいけないと思うんで。やっぱ嬉しいですしね。次の仕事に繋がったとか言われると。そんな感じです。
Q:来年(2014年)のイベントは?
なんにも決まってないですね。
自分の作品展はやりたいなーと思ってます。決定はしてないです。
まずはお客さん優先でね。私はお金払って借りないので。それは立場が弱いんですよ。この日やるわーとか言えないんですよ。寂しい。つらい。
とりあえずビエンナーレはまじめにやりますけど、他はすげーバカなことをやってるなって思っておいてください。それを子どもたちに見せてくことは私の大事な役目だなってバカな大人がいるなっていう、あーはなりたくないって思わせないといけないなっていう。くだらないって言われないとなぁ。
バカって言われ続けるは難しいですよね。
聞き終えて想う
ヤマモトさんは、恐らく機を見て敏な方でチャンスと察する能力が高くて、またそれを確実に捉えるのがうまい人だなと思った。
しかも、フラットでフレンドリーな人間感覚な方で根っからの親分肌なのでは?
ヤマモトさんの言うことはぶっ飛んでて、聞いていると時に夢の話なのか空想なのか理想なのか計画の話なのかわからなくなるんだけど、大の大人がこれだけのことをなかなか人前で言ってのけられない。
夢や理想は大きければ大きいほど、人前で声に出さなければ実現する可能性はどんどん低くなる。つまりどんどん人に喋った方がいい、ということを教えられたような気がする。
2014年の予定はまったく決まってないようだが、今後の動向に目を離せない。
アートはよくわからないし敷居が高いとか思ってるけど、面白いと感じてる人はどんどんヤマモトさんに会って欲しい。
リンク
Gallery2
ギャラリー2 2012年神戸に出来たギャラリーです。カフェ&バー&アトリエ&イベントなどいろいろ。
http://www.nonogallery.com/
ヤマモトヨシコ
現代アーティストヤマモトヨシコ:嶋本昭三の弟子をしながらカメラマンやアートディレクターをしています。
http://www.arttocamera.jp/
聞き手:クリハラ ノブユキ
http://twitter.com/kurinobu